私が、定年退職を選択する過程で大きな影響を受けたもののひとつに、
リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』という本があります。
後から知ったのですが、「人生100年時代」と世間で広く言われるようになったのはこの本が発端だということです。
私たちは、長寿化の進行により100歳まで生きるのが普通になる時代を迎えようとしています。
寿命が伸びるということは、ありがたいことのようですが、一方で、それだけ長い期間生活を支える必要があるということでもあります。
深刻化する少子高齢化に対処するため、政府は企業に対して70歳までの雇用安定を努力義務としました。
この次には、年金支給年齢の引き上げが行われても不思議ではないように思われます。
本来であれば、健康で長い期間生きられることでさらに人生を謳歌したいところなのに、
「いつまで働けばいいんだろう」と不安な気持ちにならずにはいられませんよね。
なぜか手放しで喜べないような気がしてしまいます。
そんな不安感を解消するヒントをこの『LIFE SHIFT』は与えてくれるように思います。
世界が大きく変わりつつある今だからこそ、私たちも今までの延長線上で人生を考えるのではなく、
「新しい生き方」に大胆に「シフト」していく必要があるのではないでしょうか。
3ステージ型仕事人生に別れを
私たちが親の世代から受け継いだ人生の各フェーズは、
- 教育:将来仕事につき、生活を支えるのに必要な学びの期間
- 仕事:生活を支えながら、やがて訪れる老後のための蓄えを作る期間
- 引退:仕事期間中に蓄えた資産などで人生の終わりまで穏やかに過ごす期間
という「3ステージ」で構成されていました。
かつて、平均寿命が70代前半だった頃は、60歳で退職したあと、10数年の引退期間を支える資産があれば大丈夫でした。
公的年金が60歳から支給されていた頃ならなおさら、老後資金の心配はそれほど大きなものではなかったのではないでしょうか。
これが、人生100年時代が到来するとそうはいかなくなることが想像されます。
「3ステージの生き方をお金の面で機能させ続けるためには、仕事のステージを非常に長くするしかないのか?」と不安になりますよね。
この問題に対して著者は次のようにいいます。
長く働くことは魅力的に感じられないし、いかにも消耗を強いられそうに思える。しかし、そう感じるのは、未来を過去の延長で考え、3ステージの生き方に沿って長い勤労生活を送るものと決めつけているからだ。
(中略)
発想を転換して3ステージの人生から脱却すれば、長く働くことがだいぶ魅力的に見えてくる。
リンダ・グラットン著 『LIFE SHIFT』 より
つまり、従来の「3ステージ型」の仕事人生に別れを告げて、多くの変化と移行を経験する
「マルチステージ型」に人生をシフトすることが必要だと著者は提案しています。
マルチステージ型人生とは
では、従来の「3ステージ型」の仕事人生から脱却する「マルチステージ型」人生とはどんな生き方なのでしょうか?
「3ステージ型」では、「教育」→「仕事」→「引退」というように一方向に流れていく人生です。
それに対して「マルチステージ型」では、教育を終えた後に、世界中を旅して経験を得るとか、
「仕事」についた後でも、次のステージに備えて、「学び直し」の期間を設けるとか、
フリーランスで働く期間を挟むとかいう具合に、さまざまな「ステージ」を必要に応じて自由に移行していきます。
このように、人生のその時々の局面で、自身にとってふさわしいと思える「ステージ」を主体的に選択していくことで、長い人生の中で働き続けることが「苦役」ではなくなるでしょう。
マルチステージ型人生を支える「無形資産」
マルチステージ型人生を生きる上で、必要になる資産があります。
現預金などの流動資産、住宅などの固定資産といった「有形資産」は、もちろんある程度必要です。
それに加えて、これからシフトしようとする「マルチステージ型人生」では、
3つの「無形資産」が重要だと著者は言います。
「無形資産」は良い人生を送るうえで価値があり、「有形資産」の形成を後押しする点でも重要だというわけです。
その「無形資産」とは、以下の3つです。
- 生産性資産
人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに必要な資産
スキルと知識が主な構成要素だが、
自分の将来の可能性を知り、幅広いネットワークを持ち、積極的に新しい経験をしていくことも重要な要素 - 活力資産
肉体的・精神的な健康と幸福のこと
友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係も含まれる
活力資産を潤沢に蓄えることは、良い人生の重要な要素になる - 変身資産
100年ライフを生きる過程では、大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる
そのために必要な資産が変身資産になる
自分についてよく知っていること
多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること
新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること
などが含まれる
これら3つの「無形資産」がこれからの「マルチステージ型人生」では重要だということです。
ポートフォリオワーカーとして生きる選択
この本の後半では、人生の長期戦略として「ポートフォリオ・ワーカー」という生き方にも触れられています。
それは、
- 所得の獲得を目的とする活動
- 地域コミュニティとの関わりを目的とする活動
- 親戚の力になるための活動
- 趣味を究めるための活動
などのさまざまな活動のバランスをとりながら生きることを意味します。
ライフステージのそれぞれの段階で重視する活動要素を決めて、自分なりにバランスをとりながら生活していくようなイメージでしょうか。
そのため、それぞれの活動に力を入れるバランスは常に同じである必要はなく、その時々でポートフォリオのように組み直していけばいいわけです。
定年退職を迎えた私が考えるポートフォリオでは、「所得の獲得を目的とする活動」にはそれほど重きを置いていません。資産の取り崩しを最低限に留めることができれば良いと思っています。
たとえばクラウドソーシングサイトで低単価のライティング案件を受注して、ライティングスキルを高めていきながら、少しばかりの収入を得るとかです。
収入としては少額かもしれませんが、ライティングスキルという「無形資産」を手に入れることができます。
他には、好きなことを生かして何か人々の役に立つことができるような活動にも力を入れたいと考えています。
例えば、PCの操作に不慣れなシニアの方に、エクセルやワードの操作方法を教えてあげるとか。
その対価としてわずかばかりの収入が得られればそれに越したことはないですけど(笑)。
あとは、近ごろ地元でもよく見かけるようになった外国人留学生たちの支援のようなこともできたら良いなと思います。
私の住む街にも、国際交流サークルのようなものがあるそうなので、一度話を聞きに行こうかなと思っています。
こんな感じで、今まで仕事に全振りしていたリソースを、色々な活動に配分しながら社会と関わっていく、そんな「ポートフォリオ・ワーカー」を目指せたらと考えています。
以上、リンダ・グラットンさんの著書『LIFE SHIFT』の内容の一部を紹介しながら、定年後の私のプランをお話ししました。
この記事で紹介した内容はほんの一部ですので、まだ『LIFE SHIFT』を読まれていない方はぜひ一読されることをおすすめします。
以上、この記事が何かあなたの参考になればうれしいです。
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