本屋大賞とは
2月に入って、今年も本屋さん店頭に『本屋大賞ノミネート作品」というコーナーを目にするようになりましたね。
普段は、Kindle Unlimited や図書館本が多くなりがちな私ですが、
この季節だけは「本屋大賞候補作」は全て購入してしまいます。
それほど、毎年の本屋大賞は傑作揃いですよね。
では、そもそも「本屋大賞」とはどんな賞なのでしょうか?
候補作を見ていく前に、あらためて確認してみましょう。
まず設立の経緯ですが、
「売り場からベストセラーをつくる!」がコンセプトで
「商品である本と、顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を作っていく、出版業会に新しい流れをつくる」
をいう趣旨から立ち上げられた賞だということです。
書店員さん達が、売り場で読者の反応を肌で感じて、
「この本はみんなに感動を与えられるに違いない」と選んだ本のトップが
本屋大賞なのですね。
だから、その対象のノミネートされるだけでも「読み応えのある傑作」である可能性が高いということだと私は思います。
「2025年本屋大賞」ノミネート作品の条件は、
2023年12月1日〜2024年11月30日の間に刊行された日本の小説であることです。
2025年2月3日に、一次投票で選ばれたノミネート作品が発表され、
二次投票がスタートしました。
その結果を受けて、2025年4月9日に本屋大賞が発表されます。
今回私は、そのノミネート10作品を読んでみました。
今年の作品も、それぞれ甲乙つけがたい傑作揃いで、
この中から大賞を選ぶのは大変じゃないかと思っています。
それでは、そのノミネート作品を私が実際に読んだ順に紹介したいと思います。
『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈

まずはこちら、ご存知のとおり昨年の大賞受賞作『成瀬は天下を取りに行く』の続編です。
今回も成瀬は無双します。
唯一無二の主人公、再び。
Amazon紹介文より
……と思いきや、まさかの事件発生!?
10万部突破の前作に続き、読み応え、ますますパワーアップの第2作!
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。
「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使になるべくしてなった女子大生……。
個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!?
面白さ、ますますパワーアップの全5篇!
前作『成瀬は天下を取りにいく』
で昨年の本屋大賞を受賞し、全国に成瀬ファンを爆増させたのも記憶に新しいです。
続編の本作でも成瀬の魅力は衰えません。
ついに、晴れて京大生になった成瀬の今後にも期待が高まる作品でした。
読後感 2024年3月11日読了
『成瀬は天下を取りにいく』の続編ですね。
今回も成瀬の無双っぷりは清々しいです(笑)。
「何になるかより、何をやるかのほうが大事」という成瀬と関わる人々は
何故かポジティブになっていくんですよね。
そして、この作品を読んだ読者もまた前向きな気持ちになるはずです。
成瀬も晴れて京大生になったので、
いつか、森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』の「黒髪の乙女」達
登場人物とコラボしてくれないかなと密かに期待しています(笑)。
『禁忌の子』山口未桜

救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ! 第三十四回鮎川哲也賞受賞作。
Amazon紹介文より
一時期「X(旧Twitter)」のポストで見かけない日は無いほど、
話題になった作品は珍しいのではないでしょうか?
私もその勢いに惹き込まれて読んだの一人なのですが、
読み終えて「さすがXの読書垢さんは見る目がある」と思わされました。
読後感 2024年11月14日
救急医・武田の元に搬送されてきた溺死体、
その身元不明の遺体は、
まるで双子のように武田と瓜二つだったという衝撃的な出だしから始まります。
この遺体は誰なのか?
そして自分との繋がりは…?
真相を追う過程にぐんぐん惹き込まれて
結末までの没入感は最近のトップクラスのレベルでした😳。
Xで話題になるのも大納得ので、本屋大賞でも上位を狙える作品だと思いました✨✨✨
『人魚が逃げた』青山美智子

ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。
そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。
Amazon紹介文より
そして「王子」は人魚と再会できるのか。
そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
はい、私の中で抜群の安定感を誇る青山美智子さんの作品です。
本屋大賞にはなんと、4年連続ノミネート!
『お探し物は図書室まで』
『赤と青のエスキース』
『月の立つ林で』
『リカバリー・カバヒコ』
と、私はどの作品も大好きで、大賞を狙えるものだったと思っています。
なので、そろそろ大賞を獲っていただきたい、是非!
ただ、今年も強敵が多いからなぁ・・・。
読後感 2024年12月1日読了
誰かを好きになると、時には臆病になることもありますよね。
こんな自分なんて、あの人に相応しくないのでは…とか。
そんなふうに鎧を着けて、お互いの想いがすれ違ったりしがちかも。
銀座歩行者天国の奇跡は、そんな恋人達を優しく導きます✨
あ~この物語好きだー😆✨✨✨
読後に表紙の絵をじっくり眺めるのも、また楽しめますね。
『生殖記』浅井リョウ

とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
Amazon紹介文より
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
「正体は誰だ?」「今度の語り手、何かが違う。」
という煽りのキャッチで「何?なに?」とまんまと引っかかったのは、
はい、私です(笑)。
そう、まさか「ヤツ」を語り手にするとは。
といっても、内容はいかにも浅井リョウさんらしい視点で語られます。
まさにノミネートにふさわしい問題作かと思います。
読後感 2024年12月21日読了
性的マイノリティを自認する尚成。
彼の内面の葛藤や移ろいを、とある視線の話者が語り続けるお話です
語り手の口調が軽妙なので、サラッと読めてしまいますが…
絶え間無い拡大再生産と成長など続くわけがない、
とわかっているのに降りられない、
ヒトへのアンチテーゼとも読めるような気もする・・・かも😉✨✨✨
『カフネ』阿部暁子

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
Amazon紹介文より
この作品は、本屋大賞にノミネートされてから知りました。
何か大きな喪失感に途方に暮れている人に、
やさしく寄り添うようなお話なのかなと思い、手に取りました。
Xのポストでも、この作品を大賞候補に挙げている方も見られますね。
読了ポスト 2025年2月6日読了
人には言えずにきた自分の一部を、
それでも、誰かに分かって欲しい。
そんな生きづらさを抱えている人は、多分あなただけじゃない。
そう優しく諭してくれるように、私は感じました🥹
始終涙が溢れて、
忘れられない作品になりました✨✨✨
Xのポストで見かけたように、これは大賞を狙える作品かもしれません。
『恋とか愛とかやさしさなら』一穂ミチ

プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が”出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
Amazon紹介文より
この作品も、ノミネート前からXでよく見かけていたものです。
「プロポーズの翌日に婚約者が盗撮で捕まる!」
なんとショッキングな出来事から始まるんでしょう。
一夜にして変わってしまう状況に、心が追いつけない。
そんな葛藤を共有しながら、苦しく読みました。
読後感 2025年2月8日読了
自分のことは自分が一番わかっている、
つもりだったのに…
何故あんな事をしてしまったのか?
その瞬間の前と後では、世間の目は代わり、多くを失うのに。
これは罪を犯した自分が信じられない、
けれど罰を受け入れるしかない。
そんな男の物語だと思いました✨✨
加害者、その家族・関係者、被害者、
そのそれぞれが深く傷を負う、一瞬の過ち!
それを犯してしまう愚かさが人にはあるのだということを
忘れないようにしたいと思います。
『小説』野崎まど

五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。
一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。
そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。
しかし、その屋敷にはある秘密があった。読むだけじゃ駄目なのか。
Amazon紹介文より
それでも小説を読む。
小説を読む。
読む。
宇宙のすべてが小説に集まる。
『小説』という名の小説。
なんと挑戦的なタイトルなんでしょうか。
小説を読むということと、それを書くということ。
それぞれの意味と意義に迫るように、
人は何故小説を読むことに惹かれるのかを考える、
きっかけをくれる作品なのかなと思います。
読後感 2025年2月10日読了
私は何故小説を読むという行為に
これほど惹かれるのか?
読書は究極のバーチャルリアリティだと思うから、
未知の土地を旅し、幾つもの人生を生きられる…。
そして、それは私を拡張していく。
この「小説」でまた、読むことの愉悦を確信しました☺️✨✨✨
『spring』恩田陸

「俺は世界を戦慄せしめているか?」
Amazon紹介文より
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家の萬春(よろず・はる)。
少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。
同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――
それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。
一人の天才をめぐる傑作長編小説。
恩田陸さんといえば、『蜜蜂と遠雷』が一番印象に残っています。
作品を読んでいる間、まるで音楽を聴いているようで、
文字の一つひとつが、ページから抜け出して
音楽を奏でているかのような感動を覚えた。
今回の『spring』ではそれがバレエに置き換わって、
どんな世界を見せてくれるのか期待を込めて、手に取りました。
読後感 2025年2月13日読了
恩田さんの文章は五感を呼び起こす、
本作からもそう感じました。
私はバレエについて門外漢ですが、
読み進めるうちに踊りが浮かび、
音楽が聴こえ、香りを感じて…。
世界のカタチを、自らの身体で再現しようとするHALの気持ちに、
近づけるような気がしました☺️✨✨✨
『アルプス席の母』早見和真

秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
Amazon紹介文より
この作品も、本屋大賞ノミネートで知りました。
「まったく新しい高校野球小説」とはどんなものだろう?
と、まず思いました。
母親の目線から見た、野球に打ち込む球児達の物語のようです。
どんな感じになるのかなと思いながら手に取りました。
読後感 2025年2月15日読了
いやー泣いた😭
うちの息子も高校球児だったんで
(強豪校じゃないけど💦)
母親の苦労と苦悩は身につまされて…
また、主人公の息子が
めちゃ良い子なのがさらに泣かせる😭
物語の終盤はもうボロボロでした
うちの奥さんに読ませたら
号泣するなきっと✨✨✨
と上のように、Xに思わずポストするほど感動しました。
これは大賞を狙える作品のひとつかと思います。
『死んだ山田と教室』金子玲介

夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
Amazon紹介文より
この作品は、ノミネート作発表前からXでよく見かけて気になっていたものでした。
ただ、表紙がなんか青春っぽい感じがして、
おじさんにはちょっといいかな?とパスしてました。
読後、さっさと手に取らなかった自分をぶん殴りたい気分になりました(笑)。
男子高校生のおバカな会話でテンポ良く物語が進みますが、
そこには、若さ故の苦悩とか葛藤とかもやはりあるわけですよ。
実によく出来た物語だと思います。
読後感 2025年2月17日読了
「これ、下手に感想言うとネタバレする?」
「別にいいんじゃね、山田の話だし」
〈いやダメだろ!新規「リスナー」さんの楽しみ奪ったら〉
「なんかさ、最初と印象変わったけど…
オレやっぱ山田好きだわ」
「本屋大賞取れるといいな」
〈お前ら優しいな〉 🥹✨✨✨
というポストをXに上げたのですが、
感想を言い過ぎると、ネタバレになる可能性が大きいので、
上記のように山田とクラスメイトの会話のように表現してみました。
この作品も良いですね!私の中では上位に入るかも。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
2025年の本屋大賞ノミネート10作品を私が読んだ順に紹介しました。
今年も粒揃いというか、どの作品も甲乙付け難い良作だったと思います。
さすが全国の書店員さんが選んだだけのことはあります。
ということで、対象の発表を前に、
今年も独断と偏見と個人的趣味で大賞を予想してみたいと思います。
実は今年もこの記事のアイコンの写真で私が良いと思った順に並べています。
正直、上位3作品はどれが大賞でもおかしくない作品だと思います。
そんな中、あえてひとつ選ぶのなら・・・、
阿部暁子さんの『カフネ』を選びたいと思います。
『アルプス席の母』や『禁忌の子』、『死んだ山田と教室』
も捨て難いし、『人魚が逃げた』も応援したいんですけどね・・・。
まあ、私の予想は昨年も一昨年も外れたのですが(笑;)
これも年に一度のお楽しみということで、外れたら笑ってやってください。
皆さんの大賞予想は、どの作品ですか?
この記事が何かあなたの読書の参考になればうれしいです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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