おじさんの本棚 第21回『青い月の夜、もう一度彼女に恋をする』広瀬未衣

読書

おじさんの本棚から取り上げる21冊目の本は、

広瀬未衣さんの『青い月の夜、もう一度彼女に恋をする』です。

京都の嵐山を舞台に、ブルームーンの夜に紡ぐ不思議な恋の物語です。

ひとつきに二度、満月がくる”ブルームーン”の8月、17歳の僕は法事で京都の嵐山にある祖母に家に行った。最初の満月の夜、僕は傘で泉の水をすくっている少女と出会う。「ブルームーンが終わるまでここにいる」という彼女に惹かれていく僕。同じ年なのに不思議な雰囲気の彼女には、大きな秘密があった――「僕はずっと君を、未来で待っている」運命の糸で結ばれた2人を描く、時空を超えたラブストーリー。

Amazon あらすじより

あらすじ

青の世界 泉での出会い

主人公の圭一)は高校2年の夏休み、家族で京都の祖母の家に来ていた。

それは、「ひぃ婆ちゃん」の法事のためだった。

法事も一通り終わり、親族の「宴会」から解放された僕は、夜の嵐山に散策に出る。

嵐山の街並みを抜けて歩いているうちに、気づくと僕は森へと足をすすめていた。

森の奥に進むと、そこには泉があった。

夜空の群青と泉の蒼色が交じり合って、世界はとてつもなく青かった。

そしてその泉の淵には、一人の女の子が。

彼女は、手に持っている透明の傘を泉につけると、少しだけ水をすくって、その水を覗き込んで、幸せそうに微笑んだ。それは金魚すくいを楽しむ小さな子どものようにも見えた。

(中略)

色白で手足の長い、女の子。真っ直ぐな黒髪がなだらかな肩にかかっている。
鼻筋は通って。口は小さく。清楚な女の子だった。
遊んでいる姿が子どものように見えたなんて、そんな発想はすぐに吹き飛ばされてしまうくらい、彼女は綺麗だった。

彼女が手にした透明の傘で何をしているのか尋ねた僕に、

彼女は泉に映る「星をすくいたくて」そうしていたという。

彼女の名前は「沙紀」といった。

沙紀との別れ際、再会を期待して「沙紀は毎晩ここにいるの?」と僕は聞いた。

すると彼女は「うん。最近はね」と言う。

そして、
私がここに来るのは……ブルームーンが終わるまでなの」と答えた。

ブルームーンの伝説

森から帰った僕は、家族が寝静まった家の縁側で、沙紀を思いながら青い月を眺めていた。

そこに、寝ていると思っていた「婆ちゃん」が現れたのでブルームーンについて聞いてみた。

ダメもとで聞いてみた僕だったが、「婆ちゃん」はちゃんと知っていて、

「ひと月に二度、満月が巡る珍しい現象のことを”ブルームーン”って、言うんやで」

そして「婆ちゃん」の暮らすこの街には、「ブルームーンについての言い伝え」があるという。

「ブルームーンの光が導くところに……過去への入り口がある」

それが、「婆ちゃん」が教えてくれた言い伝えだった。

彼女が泉に来る理由

二度目の夜、沙紀と泉で再会できた僕は、彼女が暮らす寮に招かれた。

そこで、沙紀が養護施設で暮らしていることを知る。

彼女の部屋には、一枚の少女の絵があった。

それは、沙紀が昨夜から今朝にかけて描いたものだという。

その「少女の絵」は、なぜだか僕の心をとらえて離さなかった。

彼女との会話は、これまでのしがらみから解放するように僕の心を癒してくれる。

その時間が幸せすぎて、夜遅くなっていることさえ気づかないほどに。

帰り道、泉まで送ってくれた彼女に僕は思わず、
「沙紀は……誰を待ってるの?」と聞いた。

すると彼女は、

沙紀は小さく呼吸をしてから、僕を見つめて、
「私が待っているのは……」
その答えを教えてくれた。

「……初恋の人なの」

その答えは僕のこころをざわつかせる

そして僕は気づいた。

僕の中に眠るその想いは、きっとー……恋だ。

僕は彼女に、恋をしている。

星の髪飾り

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沙紀は「初恋の人」を待っている。

そう知らされた僕は、彼女の想いを応援したい気持ちと、自身の恋心の間で切ない想いをつのらせていく。

そんな思いを抱えながらも、僕は沙紀と京都の街で初めてのデートをした

前もって、「婆ちゃん」に聞いたオススメの場所を巡るデート。

幸せな時間はあっという間に過ぎ、沙紀も帰るのが名残惜しそうに見えた。

デートの前日僕は、沙紀へのプレゼントに「星の髪飾り」を用意していた。

髪留めの部分に大きな星がついており、そこから細い糸が垂れて、小さな星が輝く髪飾り

妹と訪れた店でその髪飾りを見た瞬間、沙紀のことを思い出して衝動的に買ってしまったのだ。

そしてデートで訪れた「鈴虫寺」でその髪飾りを彼女に渡すと、

”どうして”
彼女の声にならない声が、もう一度聞こえた気がした。
薄く開いた唇と、細い肩が震えている。
彼女は、手の中にある星飾りを見て泣いていた。

彼女の涙の意味は僕にはわからなかったけど、僕は、彼女の涙を拭いてやりたいと思った。

彼女はなぜ、髪飾りを見て泣いたのだろう。

二度目のブルームーン

ブルームーンは「ひと月に二度満月が巡る」現象。

沙紀のいる京都を離れてしばらくして、二度目のブルームーンがやってきた。

そして、そのブルームーンが僕に大切なことを思い出させた。

二度目のブルームーン最後の日に今までの全てが必然だったと僕は気づいた。

そして、僕はひとり京都に向けて家を飛び出していった。

読後感

この作品は、今までの読書履歴から「Amazon」にオススメされて読んだものです。

読んでみて、自分の好みが「『Amazon』にしっかり握られているなー」と思わずにいられませんでした。σ^_^;

私のボキャブラリーが乏しくて、この作品の感動を上手く伝えられないのではないかが心配です。

この物語の「青の世界」が只々綺麗で、その中で静かに育まれる「圭一と沙紀」の恋がなんとも愛おしいのです。

京都嵐山ブルームーンが一緒になれば、こんな不思議な出来事も普通に受け入れられるような気がします。

あらすじではあえて触れませんでしたが、物語のラストに控える「ギャラリー」でのシーンは涙が止まりません。

展示された水彩画を一枚づつ鑑賞していく圭一のこころに湧き上がる想いが、伝わってきます。

それはまるで、今までの出来事をひとつずつ「掬いあげて」いくようで

ひとつ「掬う」ごとに、「短い眠りについていた想い」が目を覚まします。

そして最後の一枚に気づいた時、圭一の中にいっぱいになった想いが溢れてこぼれ落ちるのです。

未読の方のためにこれ以上は控えますが、最後に一つだけ。

この本を読むと、「中村屋のコロッケ」が食べたくなります。

近いうちに嵐山に行きたいと思います。(^。^)

とてもオススメの作品です。是非一度手にとってみてください。

今なら、「Kindle Unlimited 読み放題」でも読むことができます。

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