以前「Kindle Unlimited 読み放題」で読めるオススメ小説5選として2021年11月版を紹介しました。
※注)2022年9月現在、上記で紹介した5作品のうち、
『ボクたちはみんな大人になれなかった』
は「Kindle Unlimited 読み放題」の対象外になっています。
ご了承ください。
今回はその続編として、2022年1月版の紹介をしたいと思います。
※前回の記事でも触れましたが、「Kindle Unlimited」はAmazonが提供する、本の定額読み放題サービスです。
補足情報です!
以前一度に保持できるのは10冊までで、それを超えて新たに読むには、何かと入れ替える必要がありました。
その限度枠が昨年末から20冊まで保持可能になったようです。
以前から限度枠拡大の情報はありましたが、それが実装されました。
これで、さらに読み放題を利用しやすくなったのではないでしょうか?
Kindle Unlimited のご案内はこちら↓
今回の記事はこんなあなたにオススメです。
- とにかくお得に沢山本を読みたい方
- 部屋の中に日々増え続ける本を何とかしたい方
- Kindle Unlimited でどんな本が読めるのか知りたい方
- Kindle Unlimited を試してみようかと迷っている方
『あの夏、夢の終わりで恋をした。』冬野夜空
2022年1月版「Kindle Unlimited 読み放題で読める小説」の1冊目にご紹介する本は、
冬野夜空さんの『あの夏、夢の終わりで恋をした。』です。
妹の死から幸せを遠ざけ、後悔しない選択にこだわってきた透。しかし思わずこぼれた自分らしくない一言で、そんな人生が一変する。「一目惚れ、しました」告白の相手・咲葵との日々は、幸せに満ちていた。妹への罪悪感を抱えつつ、咲葵のおかげで変わっていく透だったが…。「――もしも、この世界にタイムリミットがあるって言ったら、どうする?」真実を知るとき、究極の選択を前に透が出す答えとは…? 後悔を抱える2人の、儚くも美しい、ひと夏の恋――。
物語の主人公「俺=羽柴透」は、不幸な事故から妹を守ることができなかった過去をずっと後悔しています。
「もしあの時自分が身を挺してでも素早く動くことができたら、ひょっとしたら妹を救うことができたかもしれない」
それは、ほんの一瞬の出来事でした。
咄嗟のことで、脚がすくんで助けの手を差し伸べることができなかったとしても、それは仕方のないことだったと思います。
けれど透は自身を責め続け「無力感」と「罪悪感」にとらわれて暮らしていました。
夏休みのある日時間を持てあました透は、書店で「馴染みの浅い恋愛小説」の文庫本を買い、初めて立ち寄った小洒落たカフェで読書をすることにします。
そこで、透は「生きているピアノ」の音色に魅せられてしまいます。
透は元々、子供の頃からピアノが中心の生活を送ってきました。
けれど、そのピアノへの情熱も、妹の事故をきっかけに完全に損なわれてしまったのです。
しかし、このカフェで聞いたピアノの旋律は、過去に味わったことのない印象を透に与えます。
万人に受け入れられる音楽を奏でられる人というのは、業界にもほとんど存在しないことを、俺は昔から痛いほど知っていた。
『あの夏、夢の終わりで恋をした』冬野夜空 より
それが難しいからこそ、奏者はまず譜面通りに弾くことを強制される。
しかし、この音色はなににも囚われることなく、自由な輝きを浮かべていた。俺の耳には、この音色が人々の心に寄り添って『さあ踊ろう』と紳士的な手招きをしているようにすら聴こえた。そうして手を引かれた心が音楽と共に踊り出す。まるで、このカフェ一帯が音の舞踏会にでもなったかのようだ。
「……ああ」
感嘆の息が漏れる。こんなにも楽しそうで自由な音楽は初めて聴いた。
その素晴らしい旋律を奏でていたのは、なんと制服姿の少女でした。
そして透はその少女に向かって、
「……ひと目惚れ、しました」と告げてしまうのです。
彼女の名前は「日向咲葵(ひなたさき)」
カフェでの偶然の出会いは、実は・・・。
二人の過去に何があったのか?
透と咲葵は、なぜ出会うことのなったのか?
物語の終盤に明かされる真実に、「どうかハッピーエンドであってくれ」
と祈らずにはいられませんでした。
『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』南杏子
次に紹介するのは、南杏子さんの『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』です。
※お詫び:2022年3月現在、こちらは「読み放題」の対象外になっています。
今回紹介する作品の中で、個人的に1番のおすすめです。
大学病院の総合診療科から、「むさし訪問クリニック」への“左遷”を命じられた37歳の水戸倫子。そこは、在宅で「最期」を迎える患者専門の訪問診療クリニックだった。命を助けるために医師になった倫子は、そこで様々な患者と出会い、治らない、死を待つだけの患者と向き合うことの無力感に苛まれる。けれども、いくつもの死と、その死に秘められた切なすぎる“謎”を通して、人生の最期の日々を穏やかに送れるよう手助けすることも、大切な医療ではないかと気づいていく。そして、脳梗塞の後遺症で、もう意志の疎通がはかれない父の最期について考え、苦しみ、逡巡しながらも、大きな決断を下す。その「時」を、倫子と母親は、どう迎えるのか?
Amazon 紹介文より引用
この本のタイトルである「サイレント・ブレス」の意味について、冒頭の作者の言葉を引用します。
作者自身が現役の医師であり、その経験からの想いが込められたタイトルではないかと思います。
サイレント・ブレス
静けさに満ちた日常の中で、穏やかな終末期を迎えることをイメージする言葉です。
『サイレント・ブレス』 南杏子
多くの方の死を見届けてきた私は、患者や家族に寄り添う医療とは何か、自分が受けたい医療とはどんなものかを考え続けてきました。
人生の最終章を大切にするための医療は、ひとりひとりのサイレント・ブレスを守る医療だと思うのです。
主人公の「水戸倫子」は、大学病院で、少しでも多くの医療知識と技術を身につけるために懸命に働いてきました。
付き合っていた男性とも、仕事優先で約束の時間に遅刻を繰り返す内に自然消滅してしまったことも仕方がないと考えています。
患者に対しても真摯に向き合ってきたつもりでした。
それなのに、上司である「大河内教授」から突然告げられたのは、「訪問診療クリニック」への異動でした。
大学病院で、もっとスキルアップを図りたい「倫子」にとってそれは事実上の「左遷」を意味します。
その異動は、果たして「左遷」なのか?
「医療現場に貴賤はないよ」と、倫子に異動を命じた教授の真意は?
異動先の「むさし訪問クリニック」で倫子は、何人かの患者を診ることになります。
- 末期の乳癌で死ぬために家に戻ったという45歳の知守綾子
- 筋ジストロフィーの進行により、人工呼吸器を使用している22歳の天野保
- 老衰により日常生活の活動性が著しく落ちた84歳の古賀扶美江
- 高尾山で保護された、推定10歳の言葉を話さない少女
- 余命3ヶ月の膵臓癌で緩和治療も拒んだ72歳の名誉教授、権堂勲
- 二度の脳梗塞で、食事も取れなくなり胃瘻で命を繋いでいる倫子の父、水戸慎一
これらの患者たちを取り巻く物語が、連作の形で展開されます。
高尾山で保護された謎の少女以外は、みんな自宅で最期を迎えます。
例えば、元ジャーナリストで末期の乳癌患者の「知守綾子」は、わがままな患者としてクリニックでも要注意人物でした。
しかし、彼女と接していくうちに「死を受け入れる」ことの意味を倫子は考えるようになります。
ある日、倫子は綾子から「キューブラー・ロス」の「死の受容」について知らされます。
綾子は以前仕事で、「キューブラー・ロス」に取材をして、対談を著書にしていました。
その著書の中で「死を受容する五段階」について紹介されています。
「死を受容する五段階」とは、「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」ー すなわち、人が不治の病に直面したとき、最初は自分が死ぬのは嘘だと否定し、次になぜ自分が死ななければならないのかと怒り、さらに死なずにすむための取引を試み、やがてうちのめされて何もできなくなる段階を経て、最終的に死を受け入れるに至るプロセスを言う。
『サイレントブレス』 南杏子
しかし、死を目前にした綾子は「あんなにうまくいくもんじゃなかった」といいます。
自身の死を目前にして、その事実を受け入れるとはどんな想いがするものなのでしょうか?
4人の患者の終末期に寄り添った倫子がこの物語で最後に向き合うのは、実の父親の看取りです。
この「ブレス6 サイレント・ブレス」こそが、作者がこの本に込めた想いが伝わる物語だと私は思います。
この作品に触れて、私も「エンディングノート」を作ろうと思いました。
最後に、倫子の父の見舞いに訪れた、大河内教授の言葉を引用します。
水戸くん、もう一度言っておくよ。死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ、僕たちの敗北だからね。
『サイレント・ブレス』南杏子
今回一番におすすめする、是非一度手に取っていただきたい1冊です。
『恋愛中毒』山本文緒
3冊目にご紹介するのが、山本文緒さんの『恋愛中毒』です。
※2022年11月1日確認:この作品は、現在「読み放題」の対象から外れたようです。
山本さんは2021年の10月に58歳の若さでお亡くなりになったと最近になって知りました。
この『恋愛中毒』は、山本さんが吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説です。
もう神様にお願いするのはやめよう。――どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに。世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説の最高傑作。
Amazon 紹介文より引用
物語の冒頭は、別れた元カノにしつこく付き纏われている「僕」の独白から始まります。
恋は人を壊す。僕は転職を機に、そのことを肝に銘じた。
『恋愛中毒』 山本文緒
この僕の「恋は人を壊す」という言葉が、読了後に改めてこの物語全体に流れるテーマだったのではないかと考えさせられます。
読み初めは、この「僕」に病的に執着する「元カノ」が「恋愛中毒」というタイトルにつながっているのかと思います。
しかし、やがて物語の主人公は、「僕」の同僚の中年女性の事務員「水無月」に入れ替わります。
夫の浮気が原因で離婚歴のある「水無月」は、それでもどこかで元夫を忘れられずにいます。
どうして、離婚することになってしまったのか?
なぜ、自分が離婚しなくてはならなかったのか?
納得できないままに、水無月は「これから先の人生、人を愛しすぎないように」と自分に言い聞かせるように暮らしていました。
そんな中、昔から憧れていた有名人に偶然出会い、愛人関係になってしまいます。
そこからのストーリ展開で、それまでの水無月の印象を塗り替えるような彼女の内面が徐々に描かれていきます。
彼女こそが、情念の塊のような「恋に囚われる」女性ではないかと思えてきます。
物語の終盤に向かって、この「恋愛中毒」というタイトルの意味がじわじわと迫ってくる作品です。
『グラスホッパー』伊坂幸太郎
次に紹介するのは、伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』です。
今まで紹介した本とはちょっと毛色の異なるものを取り上げてみました。
この作品は、全3冊の「殺し屋シリーズ」の第1作にあたるものです。
「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!
Amazon 紹介文より引用
物語の主人公「鈴木」は、裏の権力者「寺原」の「馬鹿息子」に理不尽にも妻を殺されました。
しかし、その「犯罪」は、単なる事故として処理され、罪に問われることもありませんでした。
警察が手を出せないならばと、鈴木は自ら復習しようと決意します。
その権力者の「会社」に潜り込んだ鈴木は、「社員」として復習のチャンスを伺っていました。
その矢先、鈴木たちの待つ車に向かってくる「息子」が、車が行き交う交差点の中に飛び出して轢かれてしまいます。
誰かが、「息子」の背中を押して車道に突き飛ばしたように見えました。
それが「押し屋」と呼ばれる殺し屋らしいということがわかります。
日頃から悪事を重ねていた「息子」は、あちこちで恨みをかっていました。
誰かが殺し屋を雇っても不思議ではない状況でした。
彼の復讐は何者かによって先に横取りされてしまったのです。
成行で、その「押し屋」を追うことになった鈴木は、押し屋と思われる男への接触に成功します。
物語は、「鈴木」と「押し屋」、自殺屋の「鯨」、殺し屋の「蝉」のストーリーが並行しながら進みます。
そして並行する物語が次第に交錯し始める時・・・。
この物語の中で私が特に印象に残った登場人物は「自殺屋」の「鯨」です。
彼は、いつもポケットの『罪と罰』の文庫本を持ち歩き、ターゲットに自殺を決意させるまでの時間にもそれを読みます。
小説は生涯でその『罪と罰』しか読んだことはないといいます。
また、彼は今まで自殺させてきた者たちの「亡霊」の幻影に付き纏われています。
その亡霊と彼との会話はとても哲学的です。
個性的な登場人物たち、ストーリ展開のスピード感!
鈴木が終盤で口にする、
僕は生きてるみたいに生きるんだ。
という言葉は、この物語が行き着いた哲学のようです。
ラストシーンでは、「えっ、この人も?」と思わせる仕掛けが・・・。
一気読み必至のおすすめ作品です。
『日日是好日』森下典子
最後にご紹介するのが、樹木希林さんの主演で映画化もされた、
森下典子さんの『日日是好日』です。
※お詫び:2022年3月現在、こちらは「読み放題」の対象外になっています。
茶道の「お稽古」を通して、日々への感謝の気持ちに気付かされるような気がします。
とても穏やかな気持ちになれる物語です。
お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。
Amazon 紹介文より引用
この作品で「茶道」の「お稽古」というものに初めて少し触れることができました。
一つ一つの所作を丁寧になぞる過程は、究極の集中につながるのでしょう。
禅と関係が深いのもわかるような気がします。
お茶を点てる、お点前の過程の所作に完全に集中できた時、全てが自然に流れます。
アスリートが「ゾーン」に入った瞬間のように、まるで自他の境界が混じり合うように。
五感は研ぎ澄まされ、手は自然に動き、夕立の雨音がクリアに聞こえる。
究極の集中がもたらす、生きづらい日常から解き放たれる瞬間。
そんな瞬間が美しく描写されます。
本気でお茶を習いたくなる、美しい作品です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、2022年1月現在、「Kindle Unlimited 読み放題」で読むことができる小説から、
私が読んでおすすめする5冊を紹介しました。
以前、昨年11月に紹介した本の中の2冊が現在「Unlimited」の対象外になっていました。
今回紹介した作品も、そのうち対象外になる可能性もありますので、
気になったものがあればお早めにどうぞ。
また、Kindle本を読むなら、専用リーダーの「Kindle Paper White」がオススメです。
その機能については過去のこちらの記事を参考にしてください。
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