Kindle Unlimited で読んだ 小説5選(2022年9月版)

読書

Kindle Unlimited 読み放題について

Kindle Unlimited」の読み放題サービスを利用して、私が読んだ本を紹介する記事を過去数回にわたって公開してきました。

今回も、8月に読んだ本から5冊を紹介しようと思います。

ちなみに、この「読み放題」対象の作品は、随時入れ替えされます

紹介するタイミングで、読み放題の対象外になってしまうことがこれまでにも度々ありました。

実は今回も、9月1日時点で、紹介する5冊とも対象外になっていることがわかりました

紹介した時点で、読み放題でないのは心苦しいのですが、

おすすめの作品であることに変わりないので、そのまま紹介させていただきます。

あらかじめ、ご了承ください。

Kindle Unlimited の詳細は下記のバナーからご確認ください。

『楽園のカンヴァス』 原田マハ

今回、最初に紹介するのは、
原田マハさんの『楽園のカンヴァス』です。

生前は評価されなかった不遇の画家、「アンリ・ルソー」。

その一枚の作品を巡って、ルソーを愛する人たちと、あくまでもビジネスの対象として追いかける者たちとの想いが交錯します。

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

倉敷にある「大原美術館」は、日本屈指の西洋美術コレクションを所蔵することで知られています。

早川織江」は、その美術館で監視員(セキュリティスタッフ)として勤務していました。

織江はかつては、世界有数の美術研究者でありキュレーターでした。

けれど今は、そのことは告げず、美術館の監視員として絵画に向き合っています。

画家を知るには、その作品を見ること。何十時間も何百時間もかけて、その作品と向き合うこと。
そういう意味では、コレクターほど絵に向き合い続ける人間はいないと思うよ。
キュレーター、研究者、評論家。誰もコレクターの足もとにも及ばないだろう。
ああ、でもーー待てよ。コレクター以上に、もっと名画に向き合い続ける人もいるな。
誰かって?ーー美術館の監視員(セキュリティスタッフ)だよ。

織江は、昔そんな会話を交わしたことを思い出していました。

そんな織江の元に、新聞社からある依頼が飛び込んできます。

新聞社企画の「展覧会」に展示するコレクション貸出の交渉担当を引き受けて欲しいというのです。

相手は、「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」のチーフ・キュレーターです。

しかも、そのチーフ・キュレーター「ティム・ブラウン」自身が、織江を交渉相手に指名したというのです。

現在は、一監視員である織江になぜそのような大役が回ってきたのか?

実は、織江とティムは過去に一枚の絵を巡って、鑑定を競ったことがあったのです。

その絵画とは、「アンリ・ルソー」の幻の名作「夢を見た」でした。

物語は、1983年に遡ります。

大富豪で絵画コレクターである「コンラート・バイラー」の代理人から「ティム・ブラウン」の元に招待状が届きました。

その内容は、バイラー所有の「アンリ・ルソーの秘められた名作」の調査依頼でした。

それは、ティムにとってまたとないチャンスでした。

招待状の指定通り、先方に向かうことを決心したのです。

そして、バイラー邸で出会ったのが、若手の研究者として学会でも名を挙げつつある「早川織江」でした。

バイラーは、「秘められた名作」の鑑定を「ティム・ブラウン」と「早川織江」の二人に同時に依頼したのです。

そして、二人のうちのどちらか、バイラーがその鑑定結果に納得した方に、その画の一切の取り扱い権利を譲るというのです。

そのためには、一冊の古い物語を毎日一章、7日間で読むことで講評することが条件でした。

そこから、二人がその物語を読むことで「アンリ・ルソー」が生きた時代が再生さていきます。

幻の名作に隠されているかもしれない謎。

その謎をめぐって、美術を愛する人と、ビジネスの対象として捉える者との思惑が交錯します。

読後は、美術や絵画についてもっと知りたいという思いが湧いてくる作品です。

『何者』浅井リョウ

次に紹介するのは、

浅井リョウさんの『何者』です。

大学卒業を前に、「何者」かになろうと踠く学生達。

就職活動でどう立ち回るかに悩む者と、自分なりの価値観で生きようとする者。

どちらの言い分が正しいのか?

そしてそれは本心からでた言葉なのか?

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。

Amazon紹介文より

拓人」は、かつて劇団で脚本を書いていました。

劇団で一緒に脚本を書いていた「ギンジ」は、独立して別の劇団を立ち上げ演劇で生きていくと決めました。

一方で、拓人は、劇団を辞めて一般企業への就活を始めることに。

拓人とルームシエアしている「光太郎」も、学生バンドの引退ライブを終えて就活に臨む決心をします。

バンド時代は金に近い色の癖っ毛だった髪を、「黒髪短髪」に切り揃えてきた光太郎。

その光太郎の元カノで、海外留学から帰国した「瑞紀」。

瑞紀の友人の「理香」とその同棲相手の「宮本」。

彼ら5人が、就活の情報交換のために集まるようになります。

とはいえ、就活に対する考え方も、価値観も異なる5人は内心では他者の意見に違和感を覚える場面もあります。

彼らはそれぞれ、ツイッターで現状報告や時々の思いなどをつぶやきます。

そのつぶやきに込められた彼らの本心とは・・・。

他者とは違うことをアピールして、マウントをとりたがる者。

なりふり構わず、実績を築こうとする者。

他者を批判的な視点で見ることで、自分を優位に置こうとする者。

リアルなツイッターでもありがちな光景が繰り広げれられます。

でも、本当のところはどうなのか?

物語を読み終えて、「本当にダメなやつはこんな感じかな?」

と考えさせられる作品でした。

『オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎

次に紹介するのは、

伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』です。

作者、「伝説のデビュー作」です。

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

Amazon紹介文より


伊藤」がコンビニ強盗を犯したのは、別に金に困っていたわけではありませんでした。

コンビニエンスストアで強盗を試みた。それも持参した包丁一つで。すぐに後ろから取り押さえられた。馬鹿げたことに違いない。しかし、自分ではさほどひどいこととも思わなかった。むしろ、僕はそういう間抜けな方法で、自分の人生をリセットしてみたかったのだ。

コンピュターエンジニアとしてもパッとしない、恋人との関係もあまり上手くいっていない、

そんな、冴えない人生をリセットするために、伊藤が選んだのがコンビニ強盗でした。

杜撰な犯行は当然失敗に終わり、警察に連行される途中、パトカーが事故を起こしまいます。

そして、気がついた時伊藤は、事故現場で助けてくれた「」によって、ある島に連れて来られていたのです。

その島は、江戸時代から約150年、外の世界から隔離されてきました

その島と、外界との唯一の橋渡しをするのが轟の役目です。

唯一彼の家系だけが、島から出るためのボートを持っていたのです。

長年隔離されてきたためか、その島は、外界の常識とは違った世界でした。

人の言葉を話し、未来の出来事を知っているというカカシ優午(ユウゴ)」。

悪事を犯した者を、射殺しても許されている「」という男。

妻を殺害されてから、事実と反対のことしか話さなくなった元画家の「園山」。

そんななんとなく普通でない人々と出逢いながら、島を案内してくれたのが「日比野」でした。

日比野は、伊藤を優午のところに案内します。

優午は、この島に伊藤が来ることを知っていたと言います。

未来を知っているカカシの優午に、伊藤はこの先どうなるのかを尋ねます。

しかし、優午は未来のことは話せないというのです。

そんな、優午が何者かに「殺されて」しまいました。

いったい誰が、何の目的で「殺した」のか?

優午には自分が「殺される」未来は見えていなかったのか?

優午がいなくなると、他にも不可解な殺人が起きはじめます。

また、この島には古くから言い伝えがありました。

この島には大事なものが欠けている。島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく

というのです。

島に欠けているもの」とは何なのか?

不思議な島の出来事なのに、私にはその世界はどこか懐かしい感じがしました。

過ぎゆく夏、気怠いの午後の読書にオススメの物語です。

『BUTTER』 柚木麻子

次に紹介するのは、

柚木麻子さんの『BUTTER』です。

実際に世間を騒がせた、ある事件から着想を得た作品です。

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。

梶井真奈子(カジマナ)」が逮捕されたのは、3人の男性を財産目当てで殺害した容疑でした。

物語を読み始めると、「ああ、あの事件がベースになっているのか」と思いました。

実際の報道で見たその事件の容疑者は、若くも美人でもない普通の「おばさん」に見えました。

世間では、なぜ男たちがそんな女性に入れ上げて、命を落とすことになったのか、色々と邪推したものでした。

物語でも、「梶井真奈子」がどのように男性たちと関わり、彼等はなぜ死ぬことになったのかの謎解きからスタートします。

週刊誌記者の「町田里香」は、勾留中の「真奈子」の独占インタビューをとるため、面会の糸口を探ります。

何度か取材依頼の手紙を出しますが、取材に応じるつもりは全く無いようでした。

やがて里香は、真奈子が美食家で食べ歩きを趣味としていて、料理自慢であることを知ります。

友人の「怜子」のアドバイスで、真奈子への手紙に彼女が作った料理の「レシピを教えて欲しい」と書いて送りました。

すると、面会に応じるという返事が届いたのです。

あなたにならばお会いしてもいいと思います。あなたは他の記者とは違いそうですね。いつでも遊びにいらしてください。かしこ

淡い紅色の一筆箋には、そう書かれていました。

それから、里香と真奈子の面会が始まりました。

最初の面会で真奈子は、こう告げます。

……事件については、何も話しするつもりはないんです。弁護士や私を支援してくれる皆様にもそう言われております。でも、あなたお料理のお話がしたいんでしょう?だったら気晴らしに会ってみてもいいかと思いました。そんな方いらっしゃらないから。私は今、美味しいものの会話に飢えているんですもの。あくまで話し相手ということであれば、これからも面会に来ていただいても構いません

あくまでも、料理に関する会話の相手として迎えるというのです。

それから、面会のたびに、真奈子は里香に対して、料理に関する様々な指示を出し始めました。

なんとか、真奈子の懐に入り込みたい里香は、忠実に指示に従うしかありません。

そうして、真奈子の指示に従ううちに、里香の中で何かが少しづつ変化し始めていきます。

美食に目覚め、体重は増加し、周囲の視線の変化を感じます。

そして、里香自身が、次第に真奈子に共感を持ち始めていることに気づくのでした。

その過程で、事件の被害者の男たちの気持ちが見えてくるような気もしたのです。

容疑者に共感を感じ始めた週刊誌記者が向かう先はどうなっていくのか?

事件の真相は?

容疑者の根底にあるものは、果たして何なのか?

この作品を読みながら、私はなぜか『羊たちの沈黙』を思い出しました。

『イノセント・デイズ』 早見和真

今回、最後に紹介するのは、

早見和真さんの『イノセント・デイズ』です。

田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪により、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士は再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

Amazon紹介文より

物語は、東京拘置所の単独室から始まります。

その部屋に一人正座する「田中幸乃」30歳は、確定死刑囚です。

元恋人の家に放火して、その妻と二人の子供を焼死させた罪で死刑が確定しました。

刑の執行を前に、幸乃は死を恐れてはいません。

少しだけ心に残るものは、春に受け取った手紙の内容と同封されていた桜の花びら。

便箋に書かれていた一節が頭から離れないのです。

「僕だけは信じているから。僕には君が必要なんだ」
優しかった彼の声が、どこか遠くで聞こえた気がした。


いよいよ「その時」がきても、幸乃は静かに思います。

お願いだから静かに逝かせてーー。

彼女は「死を望んでいる」かのようです。

幸乃がまだ小さい頃は、両親と姉に囲まれて幸せな少女でした。

それが、一体どこで運命が狂い始めたのでしょうか?

誰かに必要とされることを渇望した少女。

その度に、裏切られ、使い捨てのようにされて、

彼女は次第に、自分自身を肯定できなくなったのかもしれません。

法廷で死刑判決が下されたとき、幸乃は弱々しいい声で言いました。

「も、も、申し訳ありませんでした」

「う、生まれてきて、す、す、すみませんでした」

そして、放火殺人事件の背景には何があったのか?

幸乃と関わった人々の追想の形で、幸乃の30年の人生が描かれます。

「不運」と「不幸」はどちらが先に人を襲うのでしょうか?

不運」な出来事により、「不幸」になるのか?

不幸」な境遇が、「不運」を呼び寄せるのか?

幸乃の人生は、まるでその二つの負の連鎖のようです。

冒頭の紹介文にもあるように「筆舌に尽くせぬ孤独」が彼女から生きる力を奪ったのです。

私は物語を読み進めながら、どうか彼女に「救い」がありますようにと、

祈らずにはいられませんでした。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回も、私が2022年8月Kindle Unlimited で読んだ中からオススメの小説5作品を紹介しました。

今回、残念ながらこの記事を仕上げている9月1日現在で、5冊とも読み放題の対象から外れてしまいました

この記事を読んていただいた方に、「読み放題」で利用していただけないのは残念です。

このように、「読み放題」の対象は随時入れ替えされます

気になる本を見つけた時は、早めにダウンロードすることをおすすめします。

Kindle Unlimited を利用しはじめて、私は確実に読書量が増えました。

今まで読んだことなかった作者さんとも、新たな出会いがたくさんあります。

読書好きな方には、本当に良いサービスだと思います。

30日間の無料体験だけでも、試してみてはいかがでしょうか?

以上、この記事が何かあなたの参考になればうれしいです。

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