2024年本屋大賞ノミネート作を読んでみた

読書

本屋大賞とは

2月初めから春先にかけて、

本屋さん店頭で「本屋大賞ノミネート作品」というコーナーを目にすることが多くなったのではないでしょうか?

毎年の本屋大賞受賞作は、どれも傑作揃いなので、躊躇いなく手に取ることができますよね。

では、そもそも「本屋大賞」とはどのような賞なのでしょうか?

本題に入る前に前知識として、少し確認してみましょう。

まず設立の経緯ですが、

売り場からベストセラーをつくる!」がコンセプトで

商品である本と、顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を作っていく、出版業会に新しい流れをつくる

をいう趣旨から立ち上げられた賞だということです。

書店員さん達が、売り場で読者の反応を肌で感じて

「この本はみんなに感動を与えられるに違いない」と選んだ本のトップが

本屋大賞なのですね。

だから、その対象のノミネートされるだけでも「読み応えのある傑作」である可能性が高いということだと私は思います。

2024年本屋大賞」ノミネート作品の条件は、

2022年12月1日〜2023年11月30日の間に刊行された日本の小説であることです。

2024年2月1日に、一次投票で選ばれたノミネート作品が発表され、

二次投票がスタートします。

その結果を受けて、2024年4月10日本屋大賞が発表されます。

今回私は、そのノミネート10作品を読んでみました。

どれも、それぞれ甲乙つけがたい傑作揃いだと思います。

それでは、そのノミネート作品を私が実際に読んだ順に紹介したいと思います。

読み終えた際のX(旧ツイッター)への私の読了ポストも共有しますね。

最後にまとめとして、私の独断による大賞予想も試みますので、

よろしかったら最後までお付き合いください。

『黄色い家』 川上未映子

十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。

Amazon紹介文より

◆2023年6月5日 読了ポスト

この物語に登場する少女たちは何を間違えたのでしょうか?

当てにならない大人の手を離れて、

仲間たちで自由に暮らせたら良かっただけ、かもしれないのに・・・。

負の連鎖に抗いきれず、堕ちていくさまがどうにも哀しいく切ないです。

人生は不条理なものだとあらためて思ってしまった作品です。

『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈

2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。

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◆2023年9月21日 読了ポスト

主人公の成瀬は、同調圧力に塗れて生きている私のような者に、

カウンターパンチを食らわせてくれます。

こんなに自分に自信が持てたら、もっと違う人生があったかもしれないと思います。

成瀬の物語はまだ続いていくので、

さらにパワーアップして文字通り「天下を取りに」いってほしい!

取り急ぎ次は「京の都」あたりを手中にしたらどうだろうか(笑)

続編にあたる『成瀬は信じた道をいく』も爽快でした。

◆2024年3月11日読了ポスト

続編のこちらもオススメです!

『リカバリー・カバヒコ』 青山美智子

新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの公園にある古びたカバの遊具・カバヒコには、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説が。アドヴァンス・ヒルの住人は、悩みをカバヒコに打ち明ける。成績不振の高校生、ママ友と馴染めない元アパレル店員、駅伝が嫌な小学生、ストレスから休職中の女性、母との関係がこじれたままの雑誌編集長。みんなの痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。

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◆2023年10月2日 読了ポスト

青山美智子さんの作品は、いつも優しいなあ。

今回の『リカバリー・カバヒコ』も最高に癒されました。

忙しない日常生活で、消耗してしまった心と身体をそっとリカバリーしてくれる

アニマルライドの「カバヒコ」、カバだけにね(笑)。

身近にリアルなカバヒコが居てくれないかなと、

思わず探しに行きました。

あなたもカバヒコに癒されてみませんか。

『レーエンデ国物語』 多崎礼

異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。
母を失った領主の娘・ユリアは、結婚と淑やかさのみを求める親族から逃げ出すように冒険の旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、やがて帰るべき場所を得た。
時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。

◆2023年10月22日 読了ポスト

まさに大人のファンタジーです!

読み始めたらたちまち「レーエンデ国」に転送された気分になります。

レーエンデに本当の自由が訪れるまで、

物語の舞台は時代を経て引き継がれていきます。

現在発行されている3巻まで読みましたが、

私もレーエンデの民の一員として国に自由な時代が訪れるのを待ち焦がれています。

未読の方はぜひ「入国」してみてください。

◆2023年10月31日 月と太陽読了ポスト

◆2023年11月3日 『喝采か沈黙か』読了ポスト

『星を編む』 凪良ゆう

『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」–瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」–才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」–花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。

Amazon紹介文より

たった一度の人生だから。

人の目にどう映るかに縛られて、

本当は望んでいない選択を積み重ねて生きるのはつまらないと思うのです。

どうすべきかは、自身の内面にこそ答えがあると思いたい。

世間がいう「正しさ」よりも自分の生き方を全うした登場人物たちに

喝采をおくりたい、そう思った物語です。

◆2023年12月22日 読了ポスト

『放課後ミステリクラブ』 知念実希人

夜の学校。プールに放たれた金魚。だれが、なんのために? 
4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」が先生の依頼で動き出す! 
「ぼくは読者に挑戦する」 
名探偵・辻堂天馬の挑戦に、キミはこたえられるかーー? 

Amazon紹介文より

作者の知念さんが、子供の頃出会った本との思い出。

読書好きになるきっかけになった、夢中になって読んだ本たち。

そんなふうに、これからの子供たちにも本との素敵な出会いをして欲しい。

そんな知念さんの思いがこもったミステリ作品です。

児童書だからと思って、侮るなかれ!

大人の私でも楽しめる作品でした!!

◆2024年2月15日 『金魚の泳ぐプール事件』読了ポスト

◆2024年3月12日 『雪のミステリーサークル事件』読了ポスト

◆2024年3月12日 『動くカメの銅像事件』読了ポスト

『君が手にするはずだった黄金について』小川哲

認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いや、噓を物語にする「僕」は、彼らと一体何が違うというのか?

Amazon紹介文より

著者自身かと思われる主人公の「僕」の語りで展開されるため、

実際にあったことがモデルになっているかのように思われます。

「僕」が遭遇する「怪しげな人物たち」におそらく共通するのは、

異常なまでに肥大化した「承認欲求ではないでしょうか。

他人に対してマウントを取ることで自身の存在を確かめるかのようです。

そして、いずれはバブルが弾けて何者でもない自分に気づく羽目になります。

愚かだなと「やれやれ」と思いながら、

いや自分は大丈夫だと胸を張れるのか?

と自問自答してしまいました。

◆2024年2月17日 読了ポスト

『スピノザの診察室』 夏川草介

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

Amazon紹介文より

私自身この年齢になると、

やはり人生最期の時のことを考えてしまいます。

どんな最後をむかえるのか?

癌のような病気になったらどう対処するのか?

認知症になって意思の疎通が上手くできなくなったら?

そんな時考えるのは、

この『スピノザの診察室』のような医師に出会いたい。

ということです。

私は余命が多少短くなったとしてもQOLを第一に考えたいのです。

◆2024年2月20日 読了ポスト

『存在のすべてを』 塩田武士

平成3年に発生した誘拐事件から30年。
当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。
異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる――。
質感なき時代に「実」を見つめる、著者渾身、圧巻の最新作。

Amazon紹介文より

過去の誘拐事件に隠された真実を追う内に、

事件の裏側を知ることになった記者の目線で物語は展開します。

次第に明らかになる真実に、

本当は誰が悪で、関わった人々はどうすることが正解だったのか?

と切なく、やりきれない想いに捉われました。

30年という時の流れの中で息を潜めて生きてきた者の人生の重みを、

見事に描き切った圧巻の作品です!

◆2024年3月6日 読了ポスト

『水車小屋のネネ』 津村記久子

18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉
ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生――

助け合い支え合う人々の
40年を描く長編小説

Amazon紹介文より

物語の始まりは、

クズな大人に愛想を尽かした18歳の理佐が

8歳の妹を連れて家を出るところから始まります。

高校を卒業して、短大に進学するはずだった理佐。

その入学金を、付き合い始めた男の事業資金の補填に無断で使った母親!

挙句その男は、8歳の妹を夜間に家の外に締め出すような虐待をしているのに、

見て見ぬふりをする母親!!

そんなグズな大人たちに、姉妹は愛想を尽かしたのです。

家を出ることを決心した理佐が見つけたのは、

安い家賃で住居を提供する蕎麦屋の求人でした。

そこには「鳥の世話じゃっかん」という謎のコメントが・・・。

その蕎麦屋では、水車小屋で蕎麦の実を挽いて、

挽きたての蕎麦粉で蕎麦を打つのが売りでした。

そしてその水車小屋の番をしているのがしゃべる鳥「ネネ」だったのです。

物語の始まりは「クズな大人」のせいでしたが、

蕎麦屋に勤めだして出会った人たちは、

まだ未熟な理佐たち姉妹を助けてくれる親切な人々でした。

それからの年月、親切のバトンが繋がれていくあたたかい物語です。

まとめ〜大賞の行方は・・・

いかがでしたでしょうか。

本屋大賞ノミネート作10作品!

シリーズで続編が発売済みのものはその内容にも触れたので、

結構、長い記事になってしまいましたm(__)m。

こうしてあらためて振り返ってみても、どれも読み応えのある作品ばかりです。

さすが書店員さんが、厳選した10作品だけのことはありますよね。

そんな粒ぞろいの作品ですが、大賞に選ばれるのはどの本でしょうか?

私ごときが僭越ではありますが、個人的感想で大賞の行方を予想してみようと思います。

私が予想する本屋大賞2024年は、スバリ、

存在のすべてを』塩田武士

です!

なんといっても、圧巻のストーリ展開と人物描写が

粒ぞろいのノミネート作品の中でも際立っていたと感じました。

その他に私の中で首位を争ったのは、


『黄色い家』川上未映子

『レーエンデ国物語』多崎礼

『リカバリー・カバヒコ』青山美智子

『黄色い家』は、さすが川上未映子さん、と思わされた傑作に違いないです。

私の中で、『存在のすべてを』のほうが強く印象に残ったということです。

『レーエンデ国物語』は、大人のファンタジーとして独特の世界観に没入させてくれる

傑作です。

物語はまだ続いているので、この先も楽しみにしていきたいと思います。

『リカバリー・カバヒコ』は、読んだ直後、今年こそ青山美智子さんに大賞を!

と思った作品です。

ひょっとしたら・・・、という思いもまだ捨てきれません。

それから、知念実希人さん『放課後ミステリクラブ』には

「特別賞」を新設してでも何か賞を取っていただきたいです!

この先の未来を作る子供たちに、

読書と親しむきっかけになって欲しいという作者さんの思いが、

本屋大賞に新しい意義を加えた画期的な作品だと思うからです。

出版社に届けられた子供たちからのアンケートハガキをXで見て、

「みんな読書沼にようこそ!」と微笑んでしまいます。

あとネタバラシですが、この記事のアイコン画像の本の位置が

左から私が評価した順になっています。

いかがでしたでしょうか。

本屋大賞2024年ノミネート10作品を読んでみて、

私なりに苦しい評価を試みました。

4月10日の発表で大外れしていたら、

笑ってやってください。

それでは、お読みくださりありがとうございました。

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